日本映画「忍者の秘密」
日本映画上映会
「忍者の秘密」
2013年7月24日~28日
映画館「イリュージョン」
(Kotelnicheskaya nab., 1/15)
入場無料
主催:
国際交流基金
在ロシア日本国大使館
ロシア国立映画保存所
1960年代の高度成長期から低成長期へ、そして21世紀に入ってからと、日本の技術の進歩や企業の海外進出を支えたものは何か?…日本人の勤勉さと忍耐力、細やかな配慮、より高みを極めようとする職人気質…様々な要素が考えられるが、今から4百年以上も前の江戸時代にその秘密を見出すことができる。
その1つが、海外でもよく知られている「忍者」の存在。忍者は、集団でその肉体と精神を鍛えて、情報収集や密命遂行に使われただけではなく、各人が個として優れた機能を発揮すると同時に、集団でも使命を果たすために、非情なまでの役割分担を徹底するという「鍛えられた特殊部隊」であった。その個としての厳しさや、使命を達成する集団劇の伝統は、マンガのみならずアニメにも描かれ、実写時代劇としては娯楽を超えて哲学的な境地にまで達している。
この特集では、海外で伝説化され、その実態を知られぬままデフォルメされて、時には誤解されている忍者について描いた作品を中心として、日本人の変身の巧みさ、日常と非日常を使い分けるその技術と抑制、そしてそのギャップが生む美や、集団による使命達成の見事さを追求する。そして時には集団に対峙する個として戦い、あるいは復讐を遂げるために忍耐の日々を送る忍者。ここに西欧にも劣らぬ日本人の個人主義的な一面を見出すことにもなるだろう。この特集を通して、日本人が物心両面において求めている目標や機能集団としての理想を把握することが出来るだろう。その名称だけが先行し、実態はいまだ謎となっている忍者とは何であるか、そして日本人にとっていざという場面での「変身」とは、集団で目標に向かう際のチームワークとは、どんなものであるかを発見して欲しい。
上映スケジュール
7月24日(水)
19:00 『忍びの者』(1962年、山本薩夫監督/角川、105分、白黒)
年齢制限:16歳以上
21:00 『続・忍びの者』(1963年、山本薩夫監督/角川、93分、白黒)
年齢制限:16歳以上
7月26日(金)
19:00 『雪之丞変化』(1963年、市川崑監督/角川、113分、カラー)
年齢制限:16歳以上
7月27日(土)
17:00 『真田風雲録』(1963年、加藤泰監督/東映、90分、カラー)
年齢制限:16歳以上
7月27日(土)
19:00 『風の武士』(1964年、加藤泰監督/東映、95分、カラー)
年齢制限:16歳以上
7月28日(日)
16:30 『サイボーグ009 超銀河伝説』(1980年、明比正行監督/東映アニメ、130分、カラー)
年齢制限:12歳以上
7月28日(日)
19:00 『異聞猿飛佐助』(1965年、篠田正浩監督/松竹、100分、白黒)
年齢制限:16歳以上
英語・ロシア語字幕付き
『忍びの者』(1962年、山本薩夫監督/角川、105分、白黒)
製作・配給=大映
1962年/105分/白黒 大映スコープ
[キャスト]
石川五右衛門=市川雷蔵
マキ=藤村志保
ヒノナ=浦路洋子
ハタ=藤原礼子
タモ=真城千都世
[スタッフ]
監督=山本薩夫
製作=永田雅一
原作=村山知義
脚色=高岩肇
企画=伊藤武郎
撮影=竹村康和
音楽=渡辺宙明
美術=内藤昭
[あらすじ]
戦国末期。伊賀の国には高技術を誇る忍者が輩出した。その中に石川村の五右衛門がいた。彼は三太夫の配下に属する下忍(最下級の忍者)だった。その頃、全国制覇の野望に燃える織田信長は宗門の掃討を続けた。そんな信長に対し、天台、新言修験僧の流れをくむ忍者の頭領、三太夫は激しい敵意を持ち下忍達に信長暗殺を命じた。一方、三太夫と対立中の藤林長門守も信長暗殺を命令していた。その頃、五右衛門は何故か信長暗殺を命ぜられず三太夫の妻、イノネと砦にいた。彼女の爛熟した体に若い五右衛門は燃え上り、彼らはもつれた。が、三太夫は女中のハタに二人を監視させていた。五右衛門はその気配を覚りハタを追ったが、その間にイノネは三太夫に殺された。が、五右衛門は三太夫に信長を暗殺すれば罪を許すとささやかれた。
『続・忍びの者』(1963年、山本薩夫監督/角川、93分、白黒)
製作=大映(京都撮影所)
配給=角川映画
1963年/白黒/シネマスコープ/93分
[スタッフ]
監督=山本薩夫
製作=永田雅一
原作=村山知義
脚色=高岩肇
企画=伊藤武郎
撮影=武田千吉郎
音楽=渡辺宙明
美術=内藤昭
編集=宮田味津三
録音=大角正夫
[キャスト]
石川五右衛門=市川雷蔵
マキ=藤村志保
タマメ=坪内ミキ子
織田信長=城健三朗
服部半蔵=天知茂
明智光秀=山村聡
鈴木孫一=石黒達也
羽柴秀吉=東野英治郎
斉藤内蔵助=須賀不二男
[解説]
村山知義原作を前作「忍びの者」のコンビ、高岩肇が脚色、山本薩夫が監督した忍者もの。撮影は「影を斬る」の武田千吉郎。
[物語]
一時は平和な生活を得た五右衛門とマキも、信長の執拗な忍者狩りに追い詰められ愛児を火中に失った。かくて復讐の鬼と化した五右衛門は信長暗殺の期をうかがうべく、マキの故郷の雑賀に身をかくし、土地の郷土鈴木孫一を頭とする反信長の雑賀党に参加し忍者復活を宣言した。そこに服部半蔵が家康の使者として来て、信長を倒すには秀吉に追い越されて焦っている明智光秀を利用することを教えた。
『雪之丞変化』(1963年、市川崑監督/角川、124分、カラー)
製作・配給=大映
1963年/113分/白黒
[キャスト]
中村雪之丞=長谷川一夫
闇太郎=長谷川一夫
お初=山本富士子
浪路=若尾文子
昼太郎=市川雷蔵
[スタッフ]
監督=市川崑
製作=永田雅一
原作=三上於菜菟吉
脚色=伊藤大輔 衣笠貞之助
企画=藤井浩明 高森富美
撮影=小林節雄
音楽=芥川也寸志
美術=西岡善信
[あらすじ]
ここは市村座の舞台に舞う上方歌舞伎の花形女形、中村雪之丞は、思いがけなくも冤罪で父を陥れた、もと長崎奉行、土部三斎一味の姿をみた。江戸下りの初舞台に早くも怨み重る仇に巡り会おうとは…。師の菊之丞は、逸る雪之丞を抑え訓すのだった。その夜の帰途、雪之丞は一人の刺客に襲われた。かつての剣のライバル門倉平馬だった。その場は忽然と現われた侠盗闇太郎に救われた。さて、三斎の娘浪路は、先日の観劇以来、雪之丞のあで姿に側室の身を忘れ恋患の床についた。これを知った川口屋は、大奥を動かすには浪路の機嫌をと、一計を案じた。それを聞いた雪之丞は好機とばかり浪路に近づくが、地位も名誉も捨ててひたすら己にすがる浪路をみて胸を痛めるのだった。
『真田風雲録』(1963年、加藤泰監督/東映、90分、カラー)
[キャスト]
はなれ猿の佐助=中村錦之助
むささびのお霧=渡辺美佐子
ずく入の清次=大前均
どもりの伊三=常田富士男
かわうその六=ジェリー藤尾
[スタッフ]
監督=加藤泰
原作=福田善之
脚色=福田善之 小野竜之助 神波史男
企画=小川貴也 翁長孝雄
撮影=古谷伸
音楽=林光
美術=井川徳道
[あらすじ]
慶長五年関ヶ原合戦のころ、戦場泥棒の浮浪児お霧、清次、伊三、六たちの底抜けの明るさに、落武者の根津甚八、筧十蔵らが加ったのも無理はない。十数年がすぎて天下が再び風雲急となったある日、一行は以前知り合ったはなれ猿の佐助というヘンな野郎と出くわした。彼は生れ落ちた時イン石の放射能が体に作用したとかで不思議な術を身につけていた。佐助をリーダー格とし、ぎたあるをかき鳴らして徳川家を諷刺する由利鎌之助を加えた一行は、大阪城に向った。ここで秀頼公から入城をすすめられて優秀な部下を探しまわっていた真田幸村と知りあい、彼に従うことになった。もし勝てばでかい夢がもてる、と佐助たちの心中もさまざまに穴山小助と望月六郎を加えた真田十勇士が出来上り、六文銭の旗があがった。いよいよ大阪冬の陣、しかし大阪城の幹部は篭城をとなえ、業を煮やした真田隊が勝手に出撃して徳川方忍者服部半蔵さえいなければ決定的勝利を得るほどの戦果をあげても叱られる始末。淀君は女、秀頼は若い、執権の大野修理の心はサッパリ判らぬときている。その間、お霧の愛を獲得した佐助は、同時に冬の陣が八百長だったという事実をつきとめた。やがて休戦、大阪城の外濠を埋めることで和議が成功したのだ。全くアタマに来た真田は俺たちだけでやろうと飛び出したが孤立無援、かえって味方の鉄砲隊に狙われ三人が死亡、お霧は流産した。城に舞い戻った佐助は修理に対決し、所詮彼らに闘う気がなかったことを知った。元和六年夏の陣が始まり、濠埋めの労役から解放された佐助達は、ただ自分達のために闘った。諸将は続々倒れ、天王寺の決戦で幸村も死んだ。燃える大阪城を仰ぎ、佐助は無事なお霧と小さな幸せを思わぬでもなかったが、服部半蔵との無意味ともいえる、しかし凄じい忍術合戦に体をブチ込んでいくのだった。
『風の武士』(1964年、加藤泰監督/東映、95分、カラー)
[キャスト]
名張信蔵=大川橋蔵
お勢以=久保菜穂子
ちの=桜町弘子
お弓=中原早苗
高力伝次郎=大木実
[スタッフ]
監督=加藤泰
原作=司馬遼太郎
脚色=野上龍雄
企画=中村有隣 松平乗道
撮影=松井鴻
音楽=木下忠司
美術=川島泰三
[あらすじ]
熊野の黄金郷と呼ばれる安羅井は、「にぶつ姫縁起」という絵巻物にのみ道中地図があるという秘境だ。この秘境をかぎつけた紀州家が、近時これに対して触手していた。一方老中水野和泉守は、道場練心館主平間退耕斉の歎願書をもとに伊賀忍者の血をひき練心館師範代をつとめる名張信蔵にこの秘境を探るよう密命した。信蔵はその重要な役割を果す「にぶつ姫縁起」を道場で見た事があった。案の定、その絵巻をめぐって不思議な事件が続出し、退耕斉は同門の高力に斬られ、一人娘ちのと共に「―縁起」は練心館から姿を消した。又もう一人水野から密令を受けたものがいた。「猫」と呼ばれる忍びの者である。この「猫」は信蔵を自在にあやつろうと魔女お弓をつかわすが、かえってお弓は好意をもつのみか、信蔵に、この事件で動く人物は全て金が目的と教えられ自分の愚かさに気づいた。こうなっては一刻も早くちのを助ける事が先決問題である。紀州屋を訪れた信蔵は紀州屋徳兵衛を口説いて、ちのと「―縁起」を簡単に手にした。徳兵衛は公儀に恩を売って身の安全を計ろうとしたのだ。裏切りに怒る高力は安羅井の写し絵を奪い、野心を燃やしながら、黄金郷へと足を向けた。信蔵も又ちのと安羅井の里へ。後に怪人猫、お弓、とつづいている。安羅井の里は不穏な空気につつまれていった。
『サイボーグ009 超銀河伝説』(1980年、明比正行監督/東映アニメ、130分、カラー)
[スタッフ]
総指揮=石森章太郎
製作=渡辺亮徳 今田智憲
プロデューサー=飯島敬 小湊洋市
監督=明比正行
作画監督=山口泰弘
脚本=中西隆三
脚本協力=ジェフ・シーガル
原作=石森章太郎
撮影監督=池田重好
音楽=すぎやまこういち
美術監督=伊藤岩光 海老沢一男
録音=波多野勲
編集=千蔵豊
声の出演=井上和彦 永井一郎 鈴木弘子
[物語]
はるか数百億年前、闇の中に、とてつもない無限質量を秘めた「超存在」があった。やがてそれは超爆発(ビッグ・バン)を引きおこし、光と音響のうずが、一瞬のうちに暗黒空間をおおいつくしていった…「宇宙」の誕生であった。
国際宇宙研究所-そこでは、所長・コズモ博士が、その研究の途上、かつてこの宇宙を生んだ母源ともいうべき「超存在」があったことに気づき、これをポルテックスと命名していた。しかも、今もなお、それが宇宙の核として存在しつづけているのだ。もし、このポルテックスをコントロールすることができれば…その超エネルギーによって、地球のエネルギー問題など、一挙に解決できてしまうに違いなかった。コズモ博士は、そのポルテックスのコントロール理論をほぼ完成しようとしていた。
その博士のもとに、長かった「黒い幽霊(ブラック・ゴースト)」との攻防に疲れ、今は引退したギルモア博士が、エスパーベビー・サイボーグ009をはじめ、8人のサイボーグ戦士たちも、博士のもとをはなれ、世界の各地で、ようやく訪れた平和の時を、あるものはカー・レーサーとして、またバレリーナとして、プロ・スキーヤーや闘牛士として、それぞれの生活を幸福に送っていた。
そんなある日、突然001が敵が襲来するという警告を発した。そして、それに呼応するかのように、宇宙監視基地(スペースウォッチコマンド)が謎の飛行物体をキャッチ。コズモ博士のもとに緊急連絡してきた。心ならずも、再び戦いの時が近づいてきたことを察知したギルモア博士は、世界各地に散っているサイボーグ009たちを、急ぎ呼び寄せるのだった。
『異聞猿飛佐助』(1965年、篠田正浩監督/松竹、100分、白黒)
[スタッフ]
監督=篠田正浩
製作=山内静夫
原作=中田耕治
脚色=福田善之
撮影=小杉正雄
音楽=武満徹
美術=大角純一
編集=杉原よ志
録音=西崎英雄
スクリプター=久保哲男
[キャスト]
猿飛佐助=高橋幸治
稲村光秋=戸浦六宏
お喜和=渡辺美佐子
甚内(堀川和孝)=宮口精二
小林弥四郎=入川保則
久仁玄蕃=穂高稔
高谷左近=丹波哲郎
お美代=吉村実子
老僧(常真寺上人)=浜村純
是村重之=小沢栄太郎
[解説]
中田耕治の原作を、福田善之が脚色、「美しさと哀しみと」の篠田正浩が監督した忍者もの。撮影もコンビの小杉正雄。
[物語]
関ヶ原合戦後、徳川・豊臣は対立。乱派、忍者が入り乱れ攻防戦は熾烈を極めていた。徳川方隠密の総帥は郡山帯刀と高谷左近、豊臣方は是村重之と野尻鷹之介であった。信濃路で関ヶ原浪人稲村光秋に会った佐助は、光秋が徳川方の総帥郡山帯刀が、豊臣方に寝返る手引きをしていたことを知り、また、両派の忍者が暗躍する諏訪城を無事通過するため、切支丹小林弥四郎を、諏訪奉行久仁玄蕃に売ったことも聞いた。東餅屋の宿場で捕らえられた弥四郎の一行に会った佐助と光秋は、弥四郎を人陰から火のような眼差しで見つめる男甚内と、美しい女お喜和の姿を見た。宿場で高谷左近一味に襲われながら、諏訪の大畑屋に泊った佐助は、十七、八の娘お美代に常真寺に来るよう耳打ちされた。一方光秋は、佐助の入浴中釘を額に打たれ殺害されていた。宿の騒動を逃れて逃げる途中、佐助はお喜和と再会した。喜和は女間者であった。約束の常真寺に行った佐助は、大阪方の是村重之が、帯刀の行方について、会見を申し込んでいる旨を知った。宿小池屋に戻った佐助は、喜和の惨殺された姿を見た。側に立つ白装束の左近は、佐助に帯刀の身柄を申し受けたいと迫った。だが隙を見て逃れた佐助は、玄蕃の輩下に襲われ、堀川和孝の屋敷に援け出されていた。