「樂-茶碗の中の宇宙」展
サンクト・ペテルブルクのエルミタージュ美術館では、7月11日より「樂-茶碗の中の宇宙」展を開催いたします!
国際交流基金(ジャパンファウンデーション)と樂美術館は、ロシアが世界に誇る、エルミタージュ美術館並びにプーシキン美術館において、「樂-茶碗 の中の宇宙」展を開催します。この展覧会は、豊臣秀吉から拝領した印を家名の由来とする樂家が、茶の湯の創始者千利休の「わび」の美意識と思想を直接的に 反映させ、450年余にわたり一子相伝でつくり続けてきた陶芸作品を、歴代の作品、当代(15代)樂吉左衛門の多様な創造活動、そして次世代の作品により 通観し、一つ一つの茶碗が内包する広大無辺な宇宙の広がりを感じ取ってもらおうとするものです。
展覧会では、楽焼成立時の時代背景を立体的に浮かび上がらせるため、17世紀初頭の芸術家本阿弥光悦の作品や、当時の京都の街を描いた「洛中洛外図」に代表される装飾性豊かな絵画作品も展示されます。
展示品は、ロサンゼルス・カウンティ美術館において、3月29日~6月7日まで開催され、好評を得ている展覧会の内容に、ロシア展では重要文化財で ある初代長次郎「二彩獅子」(樂美術館蔵)、「黒樂茶碗 銘ムキ栗」(文化庁蔵)、「赤樂茶碗 銘無一物」(頴川美術館蔵)などの名品が加わるなど、展示 点数はおよそ倍増します。
また、本展の開催にあわせ、裏千家ミッションによる茶道レクチャー・デモンストレーション、及び茶の湯文化や樂茶碗の精神と極めて共通する世界をもつ金剛流能公演が実施される予定であり、概要が判明次第、追報させて頂きます。
展示総点約170点の本展は、ロシアで初めて本格的に樂焼を紹介する展覧会となります。
皆様のお越しを心よりお待ちしております!
2015年7月11日(土)~9月6日(日)
エルミタージュ美術館
【入場】
エルミタージュ美術館の一般入場チケットでご入場できます
【主催】
独立行政法人国際交流基金、公益財団法人樂美術館、エルミタージュ美術館、プーシキン美術館
【共催】
在ロシア日本国大使館、在サンクトペテルブルク日本国総領事館
【企画協力】
京都国立近代美術館
【協力】
日本航空株式会社、フィンエアー、フィンエアーカーゴ
【展覧会専門委員会】
林屋晴三(頴川美術館理事長)
赤沼多佳(三井記念美術館参事)
伊藤嘉章(京都国立博物館副館長)
樂吉左衞門(樂家15代当主、樂美術館理事長・館長)
【キュレーター】
松原龍一(京都国立近代美術館学芸課長)
タチアナ アラポヴァ(エルミタージュ美術館学芸員)
アイヌーラ ユスーポヴァ(プーシキン美術館学芸員)
樂焼は16世紀創設以来450年の歴史を経て、今日に伝えられてきた日本独自な陶芸文化です。初代長次郎から15代にわたる樂歴代の伝えた伝統の精神は、それぞれの時代を生きる創造的な営みそのものでもあります。小さな手のひらに収まる茶碗という限られた造形世界の中に、自然との深い関わりを探求し、意識あるいは人為と自然、偶然性と必然、部分と全体、完と未完、充足と不足、など哲学的な思索、宇宙観と言うべき造形を追求してきました。それはブラックホールのような無窮の宇宙から、谷川の幽かなせせらぎに至るまで、茶碗の内側は将に手のひらに広がる「茶碗の中の宇宙」と言えましょう。それは古い価値の継承ではなく、まさに現在進行形の現在性を生きるアヴァンギャルドな取り組みと言えます。樂茶碗の中に秘められた思想性は、将に現代思潮とも響き合うものであり、ロシアはじめ世界におおきな意味をなげかけるものでしょう。
今回の展覧会は重要文化財、重要美術品を含み、樂歴代作品を中心に、現代を生きる「樂」として、私こと十五代吉左衞門、さらに「受け継がれる未来」として、近い将来十六代を継承することとなる樂篤人の仕事を含め展観いたします。出品作品の多くは京都、樂美術館から出品されています。樂美術館は昭和53年、十四代樂覚入によって設立、450年にわたって樂焼の伝統を伝えてきた樂家に伝来した歴代作品や資料、関係茶道美術品が寄贈されました。樂美術館のコレクションは永き歴史の中、樂歴代と共に今日に伝えられ、また歴代の制作の糧とされてきた作品でもあります。歴代はこれらの名品から学び、伝統の本質を理解し、また新たな挑戦を通じて自らの造形世界を作り上げてきました。まさに樂美術館は樂焼450年のエッセンスが詰まっている美術館と言えます。
本展はこれら樂美術館のコレクションを中心に、重要作品を所蔵する他美術館、また、茶の湯の創始者の千利休の子孫であり茶の湯文化を今日に伝える表千家、裏千家からも出品されるという日本国内でも滅多に見られない充実した展観内容となっています。今回の展覧会を通して、ロシアの皆様には樂焼世界を堪能戴き、深い理解と共感を戴く機会を得ましたことに心から喜びを感じるものであります。
樂吉左衞門