地点|京都のロシア公演
地点|京都のロシア公園
代表で演出家の三浦基氏の下、国内外で質の高い活動を行っている地点。
地点は劇作家アントン・チェーホフの「ワーニャ伯父さん」と「桜の園」をロシア・モスクワにおいて上演します。
地点はロシアの劇作家アントン・チェーホフの長編戯曲『かもめ』『ワーニャ伯父さん』『三人姉妹』『桜の園』をすべて舞台化し、再演可能なレパートリーとする<地点によるチェーホフ四大戯曲連続上演>シリーズを2007年より2年間かけて制作してきました。
2011年2月、作品のうち『ワーニャ伯父さん』と『桜の園』の2作をロシアの舞台で上演します。
公演のスケジュール
◆ 「ワーニャ伯父さん」
2011年2月14日 20:00
2011年2月15日 15:00
会場:メイエルホリド・センター
◆ 「桜の園」
2011年2月17日 20:00
会場:メイエルホリド・センター
日本語、ロシア字幕つき
問い合わせ先:(495) 363-10-79
meyerholdcenter@gmail.com
地点|京都:http://www.chiten.org/
地点 CHITEN
多様なテクストを用いて、言葉や身体、物の質感、光・音などさまざまな要素が重層的に関係する演劇独自の表現を生み出すために活動している。劇作家が演出を兼ねることが多い日本の現代演劇において、演出家が演出業に専念するスタイルが独特。
代表の三浦基が青年団演出部に所属していたため、「青年団リンク・地点」として2003年から2004年まで活動していたが、2005年4月、青年団からの独立と同時に京都へ移転。同年『かもめ』(作:A・チェーホフ)にて利賀演出家コンクール優秀賞を受賞。翌2006年には『るつぼ』(作:A・ミラー)でカイロ国際実験演劇祭ベスト・セノグラフィー賞を受賞。2007年より<地点によるチェーホフ四大戯曲連続上演>に取り組み、第三作『桜の園』では代表の三浦基が文化庁芸術祭新人賞を受賞した。
三浦 基 Motoi Miura
1973年生まれ。桐朋学園芸術短期大学演劇科・専攻科卒業。 1996年、青年団入団、演出部所属。1999年より2年間、文化庁派遣芸術家在外研修員としてパリに滞在する。2001年帰国、「地点」の活動を本格化。2005年、京都へ拠点を移す。2008年には初めてオペラ作品『流刑地にて』(原作:フランツ・カフカ、作曲:フィリップ・グラス、東京室内歌劇場主催)を演出し、高い評価を得た。2008年度京都市芸術文化特別奨励者。
レパートリーについて
地点はロシアの劇作家アントン・チェーホフの長編戯曲『かもめ』『ワーニャ伯父さん』『三人姉妹』『桜の園』をすべて舞台化し、再演可能なレパートリーとする<地点によるチェーホフ四大戯曲連続上演>シリーズを2007年より2年間かけて制作してきました。
演劇でなにか夢を見たいと思うと、チェーホフの登場人物たちがごっそりと立ち現れます。『桜の園』のロパーヒンと『三人姉妹』のチェブトイキンが、同じ舞台にいたら何を語り合うんだろうなんて空想も含めて、私にとってチェーホフは大変な状況です。なぜチェーホフかという問いに、きちんと答えられないのは、「好きだから」という感情をどうやって隠そうかと思いあぐねているからです。なぜ隠そうとするのかと考えると、それは演出とは関係のないことだと思うからです。だからもう、チェーホフはあんまり好きではありません。なぜ、チェーホフをやるのか? 二年かけて四大戯曲を全部やるという計画がおおごとなのではない。近代を超え、演劇の現代性と出会えるのではないかという私のほのかな期待が事を大きくしているのです。これをやらなければその先に行けない気がしたのです。
ワーニャ伯父さん
原作:アントン・チェーホフ
翻訳:神西清四大戯曲のなかで二番目に書かれ、シリーズ第一作となった作品。ルーマニア・シビウ国際演劇祭では現地での熱狂的な支持を得た。一台のピアノを配したシンプルな舞台を背景に、チェーホフの言葉が真に迫る。
チェーホフの四大戯曲のうちで、『ワーニャ伯父さん』は最も地味な作品です。ワーニャという人物が、今風で言えば中年期のうつ病と診断できるような状態にあるからです。この男の愚痴を永遠に聞き続けなければならないような、おそろしく哀しい気分にさせられます。しかし、演劇というものは残酷で、彼を愛すべき人間として捉えると、すぐに説教くさくなってしまう。ゴミのように、いやゴミ以下にワーニャをいさせること。そこまで人間を蔑むことによって、初めて見えてくるものがあります。本当の「暇」についてです。暇な時間を徹底的に扱うこと。むしろ愛すべきはこの時間そのものにあるのではないか。私はこれを時間の無駄遣いの果ての、人生の希望の劇と考えています。
桜の園
原作:アントン・チェーホフ
翻訳:神西清チェーホフの遺作となった作品を〈静〉と〈動〉の鮮やかな対比のなかに描くシリーズの真骨頂ともいえる作品。平成19年度文化庁芸術祭新人賞受賞作。
私の場合、演劇をやっていると未来や希望のことを忘れがちになります。それは演劇をつくることが、「いま、ここで」できることから出発し、過去の歴史へ向かって歩いてゆく作業だからです。チェーホフ本人が遺作と自覚した『桜の園』は、軽さに満ち、粋なまでにテクニックを駆使し、集大成にふさわしい完成度があります。そして、めずらしく未来について大変な希望を謳っているのですが、そこだけはどうもモタクサイ。だからこそ、いつもと違って、未来を、希望を演劇にしてみようと思います。もちろんそれは「見せかけ」であるが、しかし「優れた見せかけ」ならば意味があると考えているのです。